第97回全国高校野球選手権和歌山大会は、智弁和歌山が3年ぶり21回目の優勝を飾った。今大会は、昨秋からの公式戦3大会で優勝校がすべて違い、例年になく混戦とみられていたが、振り返ってみるとその通りになったと思う。全38試合のうち2点差以内の決着が半分の19試合もあり、取材する側も手に汗握るゲームが多かった。
33年ぶりの優勝、甲子園出場を目指した地元勢(南部龍神含む)は準々決勝で姿を消すなど日高地方の高校野球ファンには少しさびしい結果となったが、敗れても接戦が多く、健闘が光ったといえるだろう。シードの日高中津は初戦、延長13回の末にサヨナラ負け。194球を1人で投げ抜いたエースの熱投は報われなかったが、とくに印象に残るゲームだった。熱投の投手といえば、南部のエースも素晴らしかった。故障明けをものともせず、8回まで1失点で周囲の期待通りの活躍を見せた。「監督、仲間のために絶対に勝つ」と気迫のこもった投球に、あらためて拍手を送りたい。地元勢で唯一ベスト8入りを果たした紀央館。1年生から夏の紀三井寺で試合に出場してきた3年生バッテリーがチームをけん引し、準優勝の和歌山商と1点を争う好勝負を演じた。2年連続のベスト8入り。しばらく低迷したが、選手たちは強豪復活を告げる、堂々としたプレーで最後の最後まで盛り上げてくれたと思う。
地元勢も6校のうち5校が2点差以内の敗退。あと一歩及ばず、悔し涙を流した選手も多かった。一発勝負の夏の大会、実力を出し切れなかった選手もいたが、その涙も人生においては成長の糧となるはず。仲間と全力で戦ったこの夏を胸に刻み、今後の飛躍につなげてもらいたい。 (賀)