「匙なめて童楽しも夏氷」――。中学生の時、国語の授業で習った俳句である。楽しい雰囲気と、なんとなく味覚が刺激されるところが印象に残り、気に入っていた。当時から今に至るまで俳句作品を読むのは大好きだが、自分で「詠む」のはセンスに問題があるためか全くできない。一度基本から学べたらと思っていたところ、日高高附属中学校で俳句の特別講義を取材する機会を得た◆講師は朝日新聞和歌山版俳壇選者の手拝裕任さん、毎日新聞紀州俳壇選者の本多邁(すすむ)さん。3年生80人が基礎から実践までじっくり学んだ。筆者にとっても楽しく有意義な時間で、中学生80人の作品を読むのも楽しい経験だった。サンタクロースを「赤いブーツのじいじ」、美しい野鳥のカワセミを「青い彗星」、ひまわりの花を照らす太陽を「親光」など、選には入らなくとも素人の筆者には面白い表現だと感じられる句がたくさんあった◆「説明するのではなく、十七音だけで人の心を動かさねばならない」と手拝さん。文芸に何より必要なのはやはり「感動」だと実感。作者の感動がそこになければ、読む人の心を動かせるわけはない。ただ感動を人に分かってもらうには工夫が必要で、その一つが「リズム感」。日本語という言葉の魔術は、語感の持つリズムによって効いて来る。名句20句を鑑賞したが、その一つ「水打つて石語りだす笑ひだす」も韻を踏んだリズムの力が読む人の心を打つ◆名句鑑賞で筆者が特に心ひかれたのは「美しき距離白鷺が蝶に見ゆ」。作者の山口誓子という名には覚えがある、と調べてみると、「匙なめて童楽しも夏氷」の作者だった。俳句に興味を持ち始めた年代に戻ったようで、これもまた心躍る発見であった。(里)

