すっかり春らしい気候になっていたのに、ここ数日は雨続きで肌寒くなった。あちこちの桜並木もすでに葉桜となり「花冷え」というには少し遅いが、この「寒の戻り」で体調がおかしいという人も多いのではないだろうか
 「月さま、雨が...」「春雨じゃ。濡れて参ろう」という雛菊と月形半平太の台詞は有名だが、春の雨には「春雨」だけでなくいろいろな呼び名がある。3月下旬から4月上旬にかけて降り続く雨には、単に「春の長雨」という名称もあるが、「菜種梅雨」と詩的に呼ばれる。春は菜の花やタンポポと、黄色い花が多い。花粉を運ぶ昆虫が最も好む色だからといわれる。色彩心理学では、有彩色の中で最も明るい黄色は光や太陽を思わせ、人の心を浮き立たせてくれるという。憂鬱な雨も、「菜種梅雨か」と思えばその憂鬱さが少しは緩和されそうだ
 4月は年度初め。進学、就職などで環境の変わる人も多い季節だ。桜の咲く下で新生活を始め、楽しいことばかりでなく少し疲れを感じる頃に春の長雨に会うということもあるかもしれない。以前の職場に勤め始めた頃、数字が苦手なのに計算の仕事が多く、疲れきった時に天候まで敵に回ったかのように雨続きで、つくづく憂鬱になった覚えがある。ストレスがたまると自然現象など些細なことにも気持ちが左右されてしまう
 「3月の風、4月の雨が5月の花を連れてくる」ということわざが西洋にはあるそうだ。この時季の雨は植物に成長をもたらす。菜種梅雨はまた、「催花雨(さいかう)」とも呼ばれるという。花を咲かせる雨である
 あと10日ほどすると二十四節気の「穀雨」。穀物を成長させる雨が降るといわれる時季である。生物の成長には、雨も風も必要なのだ。     (里)