サッカーは、11人のスポーツ。前後半各45分の90分も試合時間があるが、ゴールキーパーを除いたプレーヤー10人の1人当たりのボールを扱う時間はわずか「2分程度」といわれている。ボールを持っていない時間は何をするのか。ボーッと突っ立っているわけではない。戦術の専門的な知識は持ち合わせていないが、攻撃面では相手の守備陣を引きつけて味方がパスを出しやすいスペースを作ったり、おとりになってドリブル突破、パス出し、シュートがしやすいようにする。攻守交替し、守備になってもオフサイドトラップを仕掛けたり、数的優位を確保するために自陣へ戻ったり。とにかくピッチを走り回らなければならない。スポーツニュースではシュートを決めた、アシストした選手がクローズアップされがちだが、ボールを持たない選手の活躍がチームにはとても大事とされる。
 9人で行う野球でも同じことがいえると思う。150㌔を超える速球派で三振をバンバン奪うエース、本塁打の魅力がある4番打者が脚光を集めがちだが、試合に勝つためにはバントを決めたり、粘り強く四球を選んだりする選手たちの働きが絶対に必要だ。ベンチで声を出して味方を勇気づけ、練習では主力選手の打撃投手に付き合うなど裏方の役割も大変大きい。甲子園に出場し、優勝候補を破ったチームのマネジャーが2年間で2万個ものおにぎりを作って選手たちをサポートしたということも話題になったように、直接は得点、失点に絡まない人たちの働きを忘れてはならない。
 卒業のシーズン。社会に出ていく人たちにはボールを持たない選手、また光を浴びずとも一生懸命な人たちのことを胸に留めておいてもらいたい。(賀)