土曜日付の文化面で不定期に「ふるさとブックガイド」として和歌山県関連の事が登場する本を紹介しているが、最近購入した白洲正子の著書「遊鬼 わが師わが友」で「龍神の宿」という章を見つけた。昭和57年に著者が龍神温泉や道成寺を訪ねたことが記されている◆白洲次郎・正子夫妻はどちらも有名である。白洲次郎は吉田茂の懐刀で、GHQと渡り合った。「人に好かれようと思って仕事をするな。むしろ半分の人には嫌われるように積極的に努力しないと良い仕事はできない」などの名言がある。本書の最終章は「白洲次郎のこと」で、米国の民政局長に「実に英語がお上手ですな」と言われ「あなたの英語も、もう少し勉強なされば一流になれますよ」と返した逸話にも触れている◆随筆家の白洲正子は海軍大将樺山資紀伯爵の孫で「韋駄天お正」の異名を持つ。次郎と口論して張り手したこともあったという。自由闊達な視点で書かれた著書には洒脱さと一本筋の通った凛々しさがある。南方熊楠や明恵上人に関心が深く、著書によく和歌山県のことが登場する◆今回読んだ本では、著者は虎ヶ峰から蛇行する日高川を眼下に望み、大蛇を連想して息をのむ。「清姫が大蛇に変身したのは、仏教説話成立以前に、こういう景色に起因があったのではないか。龍神の名も、おそらくそこから出たのであろう」との感想に、日高川は2級河川では日本一の長大な川であることをあらためて思った。ものの本質を見ようとする目は夫妻に共通している◆白洲正子の著書は偶然読み始めたのだが、収穫は数知れない。本との出会いは人との出会い。とりあえず「ふるさと」を切り口に、面白い本をもっと探して紹介したいと常に思っている。(里)