アワビなどの漁獲量が激減したのは、日高川上流の椿山ダムから排出され、河口から海に流出、堆積した濁質が原因として、美浜町の三尾漁協(村尾敏一組合長)と組合員58人がダムを管理する県を相手に損害賠償等を求めている訴訟は14日、和歌山地裁で第20回の公判が開かれ、結審した。貝のエサの海藻が枯れる磯焼け問題が浮上して20年以上、注目の判決は平成23年2月の提訴から丸4年が過ぎ、来年3月10日に言い渡される。
 三尾地先のアワビなど貝類の水揚げは、椿山ダムが竣工した翌年の平成元年をピークに年々減少。4年には三尾漁協が下関水産大学研究室の協力で藻場造林実験を行った結果、岩礁に付着する浮泥が藻の生育を阻害していると立証され、その検証データを県に提出した。その後、6年に県が日高港湾計画を発表、漁協は漁業権の一部削減への同意を求められたが、不十分な環境アセスメント、一層の浮泥拡大の懸念から、総会でこれを否決。9年には港湾事業を進めたい県側から強い要請を受け、漁協は専業者と県、地元町長らもまじえた協議を重ね、当時の西口勇知事との間で県が洪水時の濁水対策を進めるとの覚書を交わし、県土木部長名で▽ダム上流に幅250㍍の濁水防止膜を設置する▽日高川右岸の導流堤を200㍍延長する――などの付帯事項が示され、臨時総会で漁業権削減に同意した。
 しかし、その後も磯焼けの進行に比例して漁獲量は減り続け、漁協は覚書に基づいた有効な対策はなんら講じられていないとし、16年6月に県に対して濁水対策と漁業の損害賠償を求め、公害紛争処理法に基づく調停を申請。13回の審理を経て22年10月には調停委から調停案が提示されたが、双方の主張に隔たりが大きく、23年1月の第15回調停で打ち切りとなった。
 漁協は23年2月10日、組合員58人とともに県を相手取り、▽ダム貯水池に堆積、貯留している濁質の撤去▽三尾周辺海域の磯に堆積している日高川起源の濁質の撤去――を求め、採貝漁業被害と慰謝料など総額約5億7000万円の損害賠償を請求する訴訟を提起。ことし5、6月には環境調査の専門家らの証人尋問が行われ、14日の公判で結審した。