和室用部材やカウンター、家具等の製造販売企業、御坊市塩屋町北塩屋の丸紀木材工業株式会社(山田誠一代表取締役)はことし4月で創業60周年を迎え、記念事業として県の「企業の森」事業に参画。5日には日高川町愛川の山林に同社の森「60年 感謝の森」がオープンし、社員約50人がヒノキの間伐作業を体験した。木材関連企業として、原点に立ち返って山に学び、自然に教えてもらおうと、感謝の心で新たな一歩を踏み出した。
 丸紀木材工業の創業は昭和29年4月。現山田社長の先代の創業者が「天候や海の状況に関係なく、1年中、安定した仕事をしたい」との思いで漁業から転身、美浜町浜ノ瀬で木材加工の仕事を始めた。37年には会社と工場が日高川河口の現在地に移り、43年ごろからは全国に先駆けて集成材を活用した木材製品作りを始めた。大手ハウスメーカーと組んで、少数の大企業を相手にした取引で成長した時代もあれば、その大企業の容赦ない方針転換で倒産寸前の危機に陥ったこともあるが、厳しさのなか顧客ニーズの変化に合わせて事業も変えながら、60周年の節目を迎えた。
 丸紀木材工業の森は「60年 感謝の森」と名づけられ、5日の第1回活動には普段、工場で和室の敷居や鴨居の化粧貼造作部材、階段やカウンターの洋風部材を製造している男性や事務の女性ら約50人が参加した。オープニングセレモニーでは山田社長(65)が会社の歴史を振り返り、「私たちはいま一度原点に返り、木を使わせていただく限りは、資源を育む森の大きさ、自然の素晴らしさ、尊さを肌で感じ、仕事のうえでも山に学ぶという気持ちを忘れないでほしい」とあいさつ。社員は5つの班に分かれ、同組合作業部の森のプロの指導で、ヒノキの間伐作業を体験した。
 工場製造スタッフの男性は、汗だくになってノコギリで木を切り倒し、「慣れない作業なので難しいですね。疲れました」と苦笑い。事務員の中谷成美さん(23)と山村悠夏さん(18)の女子コンビは切り倒された木の枝切りを体験し、「私たちの会社に材料が届くまでの最初の現場がここ。木を切るだけでもすごい労力ですし、山から運び出すというのも大変な仕事だとよく分かりました」と話していた。