著しく危険性の高い業務において精励した人をたたえる第22回危険業務従事者叙勲(29日付)の受章者が決まり、県内は元警察官、元自衛官ら42人が選ばれた。日高地方からは警察功労で元県警部の田嶋正男氏(71)=御坊市湯川町富安=、消防功労で元御坊市消防司令の山戸勉氏(65)=御坊市野口=の2人が瑞宝単光章を受章。5月中旬に伝達、喜びの拝謁が行われる。
 御坊市島出身の田嶋氏は昭和39年、21歳で警察官となり、警察学校を卒業後、湯浅署外勤課(現在の地域課)に配属された。3年後には交通課の事故捜査係にかわり、以後、田辺、御坊などに異動しながら交通事故の現場を中心に、59歳で退職するまで38年間のうち33年8カ月は事故捜査係だった。
 全国の交通事故死者数は昭和40年代に激増し、ピークの45年には1万6765人が死亡。和歌山県内も44年には過去最悪の230人が犠牲となった。
 「交通戦争」と呼ばれたこの時代、事故捜査係の田嶋氏は寝食を忘れるほど仕事に追われた。数えきれない死亡事故のなかで忘れられないのは、30年ほど前にみなべ町岩代の国道で起きた正面衝突。雨の降る深夜、居眠りが原因か、大阪から実家に帰省する途中だった男性運転の乗用車が中央線を越え、大型トラックと衝突、男性と妻は即死し、後部の娘3人のうち二女も亡くなった。
 夫婦はともに幼いころに片方の親を亡くしており、助かった2人の娘のうち、長女は脳にダメージを受けて重い障害が残った。軽傷で済んだ幼い三女は幸か不幸か、状況をはっきり理解できず、父方の祖父に引き取られたという。
 事故とともに多かったのは悪質なひき逃げ事件で、何人もの犯人を地道な捜査で検挙した。「死亡事故やひき逃げにはいろんな人間模様がありました。無事に務めを果たし、叙勲をいただけるのもご指導くださった上司、同僚の皆さまのおかげです」と話している。