日高町議会に19日、先月下旬から胸膜炎・胸水の加療のため入院している中善夫町長(70)=原谷、3期=から突然の退職申出書が提出され、同日の本会議で31日付の退職が全会一致で同意された。中町長はメッセージで体調が思うように回復しなかったことで決意を固めたとし、任期途中での辞職にお詫びも述べた。これで次期町長選は5カ月ほど前倒しとなり、5月11日ごろに実施される見通し。いまのところ新人の目立った動きはないものの、現職の態度表明待ちの静けさが一変、春の嵐の気配も漂い始めた。
 本会議では全議案の審議が終わったあと、議会事務局長が退職申出書を朗読。続いて小宮正昭副町長がメッセージを読み上げた。
 メッセージでは、難病と闘いながらソチ五輪のジャンプ男子団体ラージヒルで銅メダル獲得に貢献した日本人選手に触れ、自身も「(その選手が)次のオリンピックを目指すように今秋の町長選挙に向け、体調を整えてまいりたいとの強い思いだった」と次期町長選へ出馬の意思があったことを前置き。そのうえで「復職を願い、治療に専念してまいりましたが、体調が思うように回復せず、深謀遠慮の結果、3月末をもって町長の職を辞任する決意を固めた」と伝えた。最後に「議員の皆さまをはじめ町民の皆さまに大変ご迷惑をおかけすることとなり、心からお詫び申し上げます」「今後は一町民として日高町の発展のために微力ではございますが、尽力してまいりたい」と付け加えた。
 中町長の本来の任期はことし10月29日までで、次期町長選の日程は9月30日告示、10月5日の投開票と決まっていた。中町長の退職は31日付。通常は退職申出書を議会に提出後、その日のうちに同意を得て失職、まれに20日で自動的に失職となるケースもあるが、「今月末でけじめをつけたい」との本人たっての希望で議会同意後12日経過しての退職という異例の対応が認められた。4月1日以降、小宮副町長が町長の職務代理者となる。
 中町長は32年間の町職員、2期7年6カ月の助役(現副町長)を経て平成14年10月、志賀政憲・前町長の後継者として元町職員同士の選挙戦で初当選。在職11年5カ月の間には「誠実と実行」をモットーに、原発に頼らない町づくり、子育て支援の充実、防災対策などに尽力してきた。平成21年12月、同24年1月と10月に病気で入院するなどしたが、先月下旬まで職務に当たってきた。4選へ向けては5団体から出馬要請を受け、当初は6月議会で態度表明すると予想されていた。
 中町長辞任に伴う町長選は公選法により議会から退職申出書同意通知(5日以内に行われる)を選挙管理委員会が受けた翌日から50日以内に行わなければならず、いまのところゴールデンウイーク明けの5月11日投開票が濃厚となっている。町長選については過去に立候補のうわさがあったベテラン議員らも寝耳に水の状態で、まだ本格的な動きはみられない。ただ、現職不出馬なら新人同士の激しい選挙戦の可能性もあり、しばらくは予断を許さない状況が続きそうだ。
 日高町議会 19日が最終日。中町長の退職申出書提出の前に追加の「町非常勤消防団員に係る退職報奨金の支給に関する条例の一部を改正する条例」を含む16議案をいずれも原案通り可決した。