黒海に突き出したクリミア半島。今、この地に対するロシアの動向に世界が注目する。2008年のグルジア侵攻と似た図式だ。この問題とは関係ないが、クリミアの天使と呼ばれたナイチンゲールについて御坊ライオンズクラブ「子ども暗唱大会」の際に調べ、感銘を受けたのでここで紹介したい。
1853~56年のクリミア戦争に看護婦として従軍。不衛生な病院の改善に奮闘、毎夜欠かさずランプを掲げ傷病兵を見回る、その気高い姿から「クリミアの天使」と名付けられた。兵士達の感動の大きさがうかがえる。42%だった院内死亡率は2カ月後14.5%、3カ月後に5%になった。だが彼女は「天使」と祭り上げられることを好まず偽名で帰国。「天使とは美しい花をまき散らす者でなく、苦悩する者のために戦う者である」との言葉が残っている。
しかし彼女の実質的な功績は、実は帰国後にあった。「専門教育の必要を訴え、看護学校創設に尽力。従軍時の病院データを分析、統計資料を作成し医療衛生改革に大きく貢献した。イギリスでは彼女は統計学の先駆者とされる。
日本とは縁の薄い話のようだが、当地方に4月開校する看護学校にもナイチンゲールがクリミアで確立した精神は生きている。また、クリミア戦争勃発は黒船来航の年。欧州各国は戦争に忙しく、アメリカはアジアで自由に動けた。日本開国の遠因はクリミア戦争ともいえる。
海を隔てても世界は互いに影響し合っている。この不安定な時代を共有するという点で、世界はどうしようもなくつながり合う。冷静に現実を見据え対策を考えたナイチンゲールの聡明な視点にならい、歴史は常に現在進行形でつくられると認識しながら世界の変化を見ていようと思う。 (里)