子どものころ大好きだったテレビアニメの一つが一休さんだった。とんちが利いて、子どもながらに「なるほど」と気分が晴れ晴れしたのをいまでもよく覚えている。その一休さんに欠かせないお殿様が室町幕府三代将軍足利義満で、京都の金閣寺の主であると知ったのは、ずいぶん後になってからだ。金閣寺と対照的に、簡素や質素という言葉に代表される東山文化の発祥の地といわれるのが銀閣寺だと、歴史に無知な筆者は恥ずかしながらいまさらになって初めて知った。正直、これまで銀閣寺について知ろうと思ったことはなかったが、縁というのはありがたいもので少しでも身近に感じ、もっと知りたいと思うようになる。
 銀閣寺の境内などに飾られる生け花を管理する花方教授の珠寶さんが、みなべ町の須賀神社で生け花を実演する催しが7日に行われた。冷え込み厳しい境内、静寂の中で梅や椿などを切り削る音だけが響く中、思いを込めて花瓶に生けていく様は、生け花に素人であり、さらに原稿の締め切り時間が迫っている身であってももう少し見ていたいと思った。生け花のことをとやかくいえる知識はないが、とにかく銀閣寺を身近に感じたひとときであった。
 今回の実演を実現させたのは、人のつながりと、提案したみなべ町農業振興協議会の会長の発想の柔らかさ、そして行動力だろう。直接町の活性化になったわけではないだろうが、新しい交流がいま始まろうとしているのは大きな意義がある。銀閣寺を知るきっかけ、みなべ町を知ってもらう機会となったのは間違いない。文化交流は息が長いほど深まる。これからどんどん発展してくれることを願う。(片)