たしか高校生のときだった。当時日本で開催されていたサッカーのクラブチーム世界一を決めるトヨタカップで、オランダの超スーパースターだったフリットが左サイドでボールを鋭くまたぐフェイントで相手を翻弄(ほんろう)しセンターリングで先制点をアシストした姿は、いまでも強烈に印象に残っている。所属していたチームはイタリア1部リーグ・セリエAの名門中の名門、ACミラン。日本ではまだJリーグがスタートしていなかったころ、世界トップ選手のプレーをテレビで見られる機会もトヨタカップぐらいで、心を奪われたのをはっきり覚えている。
 そんな超ビッグクラブで日本人がプレーするなんて、当時は考えすらできなかったことだ。日本代表でもひと際存在感を放つ本田圭佑選手がACミランに移籍した。背番号はなんと、フリットをはじめサビチェビッチやルイコスタといったファンタジスタが背負っていたエースナンバーの10。いかに期待されているかの表れで、アジア人で初めてだという。先日の入団会見でも地元は大騒ぎで、同じ日本人として活躍に期待せずにはいられない。本田選手は12歳のころからセリエAでプレーするのが夢だったという。目標を持ち続けること、思いの強さは人を強くするのだろう。
 今月3日、大成中出身で大阪桐蔭高校女子サッカー部に進学し、全国大会に出場する上西可奈子選手を2年ぶりに取材させてもらった。将来の夢はプロ選手となって、なでしこジャパンに入ることだと、2年前と同じ答えが返ってきてうれしかった。高い志が彼女の強さの原動力だろう。なでしこのユニホーム姿が見られることを楽しみにしたい。 (片)