昨年暮れの有馬記念を8馬身差でぶっちぎり優勝した競走馬、オルフェーヴル。有終の美を飾ってまさしく歴史にも記憶にも残る名馬となった。
 名馬と呼ばれる場合、どのレースでも圧倒的なパフォーマンスを見せつけてきた馬がほとんど。近年では14戦12勝、史上2頭目の無敗での牡馬クラシック3冠馬のディープインパクトが真っ先に思い浮かぶところだろう。オルフェーヴルという馬は、同じ3冠馬といってもディープインパクトとは少し戦いぶりが異なる。デビュー戦を快勝したあと、2走目は2着と取りこぼし。初重賞挑戦の3走目には10着と大敗を喫した。そのネックになったのが激しい気性。騎手を振り落とすシーンも何度かあり、とくに新馬戦直後は記念撮影もできなかったほどだったとされる。激しい気性が出世を妨げ、レースで実力を出し切れなかった。3歳春になって、ようやく素質が開花。その後も何度か凡走はあったものの、フランスで行われる世界最高峰のレース、凱旋門賞で2年連続2着などと輝かしい戦績をマークした。
 デビューから連勝街道を突き進むエリート馬も嫌いではないが、個人的には調教やレースを重ねて着実に強くなっていくオルフェーヴルの方に親しみ、愛着を感じる。買ってしまった日から型遅れになっていく機械と違い、生き物は老化しても進化、進歩していくから素晴らしい。自分自身に、年齢を重ねるたびに成長していかなければと改めて感じさせてくれる馬だった。
 午年のスタート。うまつながりでつづっただけではない。この1年、失敗はあってもいろんなことに挑戦し続け、最後に記憶にも成績にも残るように頑張りたいと誓いを新たにしている。  (賀)