先日、アニメ映画の巨匠宮崎駿さんの新作「風立ちぬ」を観てきた。ゼロ戦を開発した堀越二郎の半生を描いたストーリー。オリジナル要素もたくさんあり、主人公には結核で妻を亡くした宮崎さんの父親の姿も投影しているそうだ。
 宮崎アニメと言えば「風の谷のナウシカ」や「天空の城ラピュタ」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」「崖の上のポニョ」など、有名タイトルを挙げればきりがないが、実在の人物を主人公にするのは今回が初めて。これまでの作品のようにファンタジックな面やハラハラドキドキするようなところがあまりなく、少し趣が違う。そういった意味からは若干物足りなく感じる人がいるかもしれないが、美しい映像と練り上げられたストーリーには、やはりくぎ付けにさせられる。
 特に主人公が子どものころから航空機に思いを馳せて、真っ直ぐに自分の夢に向かっていく姿は、すがすがしい気持ちにさせられる。主人公は戦闘機の開発に携わってしまうが、本当に開発したいのはあくまで美しい航空機。そんなシーンが何度も出てくる。そこには宮崎さんの反戦への強いメッセージも込められているのだと思う。また、ヒロインの里美菜穂子との出会い、再会、結婚、そして別れ...お互いを思いやるロマンチックな恋愛物語も展開され、心が洗われるような気がした。
 宮崎さんは今回の作品を最後に引退を宣言した。これまでも何度か引退宣言して結局引退しなかったが、今回は本気らしい。しかし、御歳72歳でもまだまだエネルギーがみなぎっている。別の形でもいいから、素晴らしい作品の制作に今後も携わってほしいものである。 (吉)