国内初のがん患者団体の寄付講座 「がんペプチドワクチン治療学講座」 の開設準備が進む和歌山県立医科大で25日、 市民公開講座が開かれた。 ペプチドワクチンは手術や化学療法 (抗がん剤) の3大標準治療に続く第4の治療法として注目を集めており、 治療学講座の中心となる外科学第二講座の勝田将裕学内助教らがペプチドワクチンの有効性や開発状況を説明。 参加者からは 「私を実験台にしてもらえないか」 などと、 最先端医療にすがる切実な訴えも聞かれた。
ペプチドワクチン療法は、 がんに対する特異的な免疫力を高めてがん細胞をやっつける治療法。 がん細胞の表面にはHLA (ヒト白血球型抗原) というカゴに入った特有のペプチド (アミノ酸化合物) が目印として発現しており、 このペプチドを人工的に合成して体内に投与することで、 ペプチドを目印にがんを攻撃するCTL (キラーT細胞) が大量に増殖し、 活性化したCTLが他の正常な細胞を傷つけず、 がん細胞のみを攻撃する。
国内のがん治療は手術、 化学療法、 放射線が標準的な3大治療といわれ、 ペプチドワクチン治療は現在、 この標準治療では効果が上がらない患者を対象に、 大学病院等の臨床研究に参加するという形で治療を受けることができる。 しかし、 現実にはがんの種類や進行度、 白血球の型 (HLA) などの条件をクリアしなければならず、 多くの臨床試験は日本人の約6割を占めるHLAがA24というタイプの患者に限定。 残りの4割の人は臨床試験を受けることができないが、 県立医科大の治療学講座は残り40%のうち20~25%のA2というタイプの人も対象とし、 まずは難治がんのすい臓がんと食道がんを対象に治験をスタートさせる。
市民講座では、 治療学講座のリーダーとなる外科学第二講座の山上裕機教授が司会を務め、 勝田学内助教、 宮澤基樹学内助教、 市民から寄付を募って研究資金を提供する患者団体 「市民のためのがんペプチドワクチンの会」 の會田昭一郎代表が講演。 勝田学内助教はペプチドワクチンはがんを攻撃するまでに時間がかかり、 がんがいったん大きくなってから徐々に小さくなり、 その効果が長く続くといった特徴を説明のうえ、「腫瘍縮小に重きを置く抗がん剤とは違う効果判定」が重要になることを強調した。
会場の女性からは 「たとえば、 胃がん切除後の再発予防のために、 (HLAの) 型が合えば投与してもらえるのでしょうか」 という質問があり、 勝田学内助教は 「現状は標準療法で効果がない人を対象とした治療の臨床研究が始まったところで、 予防のための臨床研究は認められておらず、 いまは投与することはできない」 と回答。 これに対し、 女性は 「では、 私を実験台として投与してもらえないでしょうか」 とわらにもすがる思いを打ち明けたが、 勝田、 宮澤両学内助教は女性のいう予防のための創薬研究の必要性は認めながらも、 現状ではまだ無理であることを丁寧に説明。 いまは治療目的の創薬前の段階であること、 ワクチン投与には学内倫理委員会の承認が必要なことなどを理由とし、 理解を求めた。

