秋以降、大物アーティストのベストアルバムリリースが続いている。つい先日も、デビュー40周年を迎えた松任谷由実が45曲入りのベスト盤を発売。読売新聞に全面3ページの広告も話題となったが、1週間で33万6000枚を売り上げ、若い世代にも新たなファンを広げている。
 今回のベスト盤には、幅広い世代の多くの人に愛される 『春よ、来い』 という名曲が収録されている。18年前の平成6年10月に発売された、同じタイトルのNHK朝の連ドラの主題歌で、翌年1月に発生した阪神淡路大震災では、避難所で寒さと悲しみに震える被災者の心を癒し、16年後の昨年、神戸新聞が行った 『震災時にあなたが励まされた歌』 という調査で1位に選ばれた。
 同新聞のHPによると、地震で自宅が全壊し、現在、東京に暮らす男性は、「震災からしばらくは抜け殻のような日が続いていた。そんなある日、テレビから『春よ、来い』が流れ始め、『俺にも春がくるのかな』と思考が再び動き始め、自分を取り戻したような感覚を得たことを覚えています」。西宮で被災した福島在住の人は、「春が来れば、街が復興し、住み慣れた西宮に戻れる日が来ると、自分を励ましていました」と振り返る。
 春よ 遠き春よ 瞼閉じればそこに 愛をくれし君の なつかしき声がする。心地よいピアノ、ユーミンの包み込むようなやさしい歌声を聴きながら、被災地の寒さを考えると涙が出そうになる。ことしもいよいよ師走。忙しさのなか、この曲に励まされ、 頑張っている東北の方もいるだろう。
 家を流され、大切な家族を失いながら、住み慣れたふるさとに戻れる日を信じ、強く生きる被災者の皆さんに、一日も早く春が来ますように...。  (静)