県議会が議員提案による制定を目指すがん対策推進に係る条例は12日、8回目の検討会が開かれ、県民意見(パブリックコメント)を受けての条例案が示された。県民意見にも要望のあった県立がんセンターの整備については条例に明文化するかどうかで意見が分かれ、結論は次回に持ち越し。検討会は12月議会に提案の予定で、可決されれば全国で20番目、近畿で4番目の制定となる。
 都道府県のがん対策推進条例は、平成18年の国のがん対策基本法成立を受け、各都道府県が独自の取り組みや基本的施策を定め、現在までに島根、高知、神奈川など19道府県が制定。がんが県民の疾病による死亡原因1位の和歌山県も議会の政策条例として、昨年12月以降、全会派から選出された委員15人の条例案検討会(座長・山下直也議員)が調査研究を重ねている。8回目の今回は8月に募集した県民意見の内容、さらにその意見を踏まえてつくられた条例案が示された。
 事務局は条例案のたたき台となるあらましをインターネット等で公表のうえ、それらに対する県民意見を募集した結果、県内を中心に全国から電子メールや手紙で57通(51人と6団体)寄せられた。
 県民意見には、和歌山出身で東京在住の男性から、手術や化学療法、緩和ケアなどがん治療と患者、家族の精神的サポートを含む高度医療を提供するがんセンターの建設の要望があった。検討会の委員からも同様の意見があったが、山下座長は「条例本文で多額の予算措置が必要な施設の新設等について規定している都道府県はない」とし、条例本文ではなく付帯決議とすることを提案。これに対し、中村裕一委員は「和歌山県のどこに住んでいても、良質ながん治療を受けられるようにしようという精神からすると、高度医療も和歌山県で受けられるというのが県民の願い。がんセンターも付帯決議ではなく、目指すべきがん治療のレベルを表すためにもどこかに(センター設置という条文を)入れてもらいたい」と考えを述べ、山本茂博委員も同調した。
 県の雑賀博子健康局長は、世界で唯一の陽子線治療と炭素イオン線治療の施設として、11年前に開設された兵庫県立粒子線医療センター(たつの市)について、「こうした施設はざっと100億円の費用がかかるが、現時点では兵庫県の施設のような重粒子線治療の効果は、約2億円で整備できるIMRT(強度変調放射線治療=リニアック)と大きな差がないという専門家の意見もある」と述べ、巨額のセンター建設には慎重な調査と分析が必要であると指摘。そのうえで、和歌山県立医科大が県のがん診療拠点病院として、すでに設置されている腫瘍センターも各種治療や緩和ケアなどの集学的治療に成果を挙げていることを強調した。
 がんセンターに関する条文化は結論が持ち越されたが、検討会は次回(26日)で最終、条例案をまとめ、12月議会に提案する方針。可決されればことし4月施行の歯と口腔の健康づくり条例に続き、8件目の政策条例となる。