死者3人、 行方不明者1人、 家屋全半壊60棟など日高川町に大きな被害をもたらした台風12号襲来からきょう4日で1年。 台風当時、 町民の命を守る避難施設が浸水などの被害で利用できない地域もあったが、 町では代替場所がないことや予算的な事情などから新たな避難施設を確保できないまま1年が経過。 そんな中、 多くの地域が独自に風水害用の避難所を指定したが、 適切な避難所が見当たらないところもあり、 大きな課題となっている。
 避難所は水害をはじめ、 土砂災害、 近い将来に高い確率で発生するとされる大地震などマルチに対応できるのが望ましいが、 日高川町指定の133の屋内避難施設のうち、 県の3段階評価で最低の1評価が61カ所ある。 昨年の台風12号では、 日高川の氾濫で133のうち18カ所が浸水被害。 12カ所が床上以上の被害で、 跡形もなく全壊した施設もあり、 避難所としての機能を果たすことができなかった。 地域によっては町指定の避難所は危険と判断して一切活用しなかったり、 いったん利用したものの身の危険を感じて高台に集団避難したところもあった。 町も台風前から避難施設の建て替えや変更など検討しているものの、 場所や予算、距離の問題などで現実的には難しく、頭を悩ませている。
 そんな状況を受け、 町内全84区の自主防災組織は、 町の呼びかけで町指定の避難施設とは別に水害用の避難所を検討。 地域独自の避難所を指定した。 計80カ所にものぼり、 高台にある個人宅をはじめ、 神社、 お堂、 倉庫、 民間施設などさまざま。 台風時、 避難所となっている集会所が川の氾濫で全壊した上越方地区では、 高台にある山下勝区長(73)宅を避難所に指定した。 山下区長は地域のためにと避難所にすることを快諾。 堤防沿いの民家と比べ、 7㍍は高いところで川の水が及ぶ心配はまったくないが、 問題も多い。 山下区長宅に行くには車でのアクセスは無理で、 数十㍍にも及ぶ急な坂道と石段を上らねばならない。 ほとんどが高齢者で体が不自由な人も多いことからスムーズな避難は難しい状況。 「混乱する水害時や夜間はなおさら危険で本当に心配です」 と不安を口にする。 山の斜面に民家のある集落では立地上、 高台に避難所にするところがなく、 新たに避難所を建設するにしても場所がない。 「町や県に新たな避難所を要望したいが、 現実的には無理だと思う。 災害に向けて少しでも早く避難していただけるよう区民に防災意識向上を呼びかけていくしかない。もうあんな台風が来ないことを願っています」と話している。