「公共工事を減らしてから、景気が悪くなった。だから逆に公共工事をどんどん増やせば景気がよくなる」。テレビの討論番組で、こんなことを言っていた人がいた。何十年も前の景気対策としては間違いではないと思うが、いまは21世紀のグローバル社会。単純に「公共工事で景気がよくなる」なんて理論は成り立たない。でも、物事を逆に考えてみる、反対の立場に立つというのは何においても必要なことだと思う。
 おもちゃなどの展示館で、自分のコレクションを並べていた。自分が見せたいものを展示すれば、同じ趣味の人が集まる。そう思っていたが、人は全然集まらなかった。これではまずいとなって、「お客さんが見たいものを見せる」に方針を変更したところ、閑古鳥がなく状況が一転。毎年黒字運営、年間40万人以上も訪れるようになり、いまでは私設ミュージアムとしては国内トップの人気という。これは群馬県に実在する施設の話。「自分が好きなものはお客さんも好き。お客さんも喜ぶ」との独善を捨て、逆の考え、立場に立てたことが成功につながったのだろう。
 政治家は有権者の身になって法律を作ったり税金の使い道を考えなければならない。会社また商売をしている人はお客さんが何が欲しいかを知る必要があり、売りたいものを売るという感覚では生き抜いていくのは難しい。いじめ問題ならば被害者の気持ちになれなければ解決には程遠く、会社をよくしようと思えばトップが働く人たちの立場になることも大切ではないだろうか。まず意識を変えなければ行動は変わらないし、結果も同じ。ちょっとした視点や立場の変化が成功の秘けつ、前出の事例が教えてくれる。    (賀)