「ドッコサンデナーコラ、ヤレサンデナーコラ、アーヨーイヨーイヨッピトオードレ」。美山地域や中津の子十浦地区で古くから伝わる盆踊り「吉川音頭」の囃子である。昨年9月の台風12号で大きな被害をもたらした日高川町の各地で盆踊り大会が開かれており、筆者はこの吉川音頭を踊る川原河の山村開発センターと旧子十浦小体育館の催しを取材した。両地域ともあまりの台風被害の大きさに、主催者は「開催は無理だと思っていた」と口をそろえた。
 囃子の「ヨッピトオードレ」は、「夜通し踊れ」という意味で、かつては朝まで踊ったという。男女交際が厳しい時代。吉川音頭は男女の仲を取り持つ踊りで、フォークダンスのように男女が手を取り合って踊り、ちょうちんだけの薄暗い会場もムード満点だったようだ。男女の仲はさておき、取材に訪れた両会場とも熱気ムンムン。地域住民らは「朝まで踊ってやろう」との勢いで、若かりし頃の思い出が詰まった吉川音頭を何度も繰り返し踊っていた。当初は開催の想像さえもつかなかっただけに、みんな喜びいっぱい。元気に踊って暑さを吹き飛ばす姿からは地域のパワーと絆を強く感じた。
 盆踊りとともに、復興への願いを込めた花火大会も開催。中津地区では夏祭りのメーンイベントで1000発の大輪が次々と夜空を彩り、復興をアピール。美山地区でも盆踊り大会のあと、やまびこ花火が打ち上げられた。暑い日が続くが盆が過ぎると、秋の足音。昨年は台風の影響で寒川祭を除く町内の秋祭りがすべて中止となったが、ことしは昨年分の思いも込めてパワー爆発。盆踊り同様、それ以上の地域の絆とパワーを見せつけられそうで楽しみでならない。       (昌)