県が初めて一般から公募した農林水産分野の研究テーマが決まり、 由良町産業建設課が要望した農作物有害獣類の捕獲手法の開発など12のテーマが選ばれた。 昨年度までは県の関係課や研究機関の発案で研究テーマを決めていたが、 本年度は市町村やJA、 漁協、 一般の生産者らにも対象を拡大。 応募があった105件の研究テーマの妥当性、 目標達成の可能性などを審査し、 外部機関の評価を経て決定した。
 県内の第1次産業も生産者の高齢化、 後継者不足が深刻で、 新たな労働力の確保のためには所得の向上が大きな課題。 県は本年度、 本庁の農林水産総務課内に研究推進室を新設し、 農業や果樹、 林業など県内9試験場を統括していた農林水産総合技術センターを廃止してその機能を本庁に集約。 新たな取り組みの一つとして、 各試験研究機関が取り組む研究テーマを一般から公募した。
 提案者の内訳は、 多い順に県・市町村が35件、 生産者団体が27件、 農林水産関係試験場が26件、 関連企業が7件、 個人が7件、 大学が3件。 内容は野菜・花き・米に関するものが32件と最も多く、 次いで果樹が26件、 林業が22件、 畜産が13件、 水産が12件だった。
 研究推進室と学識者、 生産者代表らによる評価の結果、 日高振興局農業振興課が提案した 「スターチスの新電照栽培技術の開発」、 みなべ町の清川出荷会とJA紀南販売課が提案した 「ウメ新品種 『露茜』 の6次産業化の推進」、 由良町産業建設課が提案した 「難防御獣類の安全で効率的な捕獲手法の開発」 など12件のテーマが選ばれた。
 由良町では、 地域の主力農産物のミカンがサルに狙われる被害が多く、 生産者からの被害届を受けた町が猟友会会員の 「追い払い隊」 に駆除を依頼しているが、 広域に移動・生息するサルを効率的に捕獲できていないのが現状。 今回の公募で県に対して研究を要望したところ、 果樹試験場と林業試験場でGPS首輪によるサルの群れの行動パターン調査、 既設囲いワナ等の実態調査からの捕獲マニュアルの作成などを進め、 シカも合わせて効率的捕獲手法を調査研究することに決まった。