耕作放棄地が増える由良町で、漢方薬に用いる薬草栽培が始まろうとしている。現在開会中の議会定例会でも畑中雅央町長が「積極的に取り組んでいきたい」と意欲。耕作放棄地対策だけでなく、廃れる産業の活性化へ期待が膨らむ。
 漢方薬は中国医学の一種。日本で独自に発展した漢方医学の理論に基づいて処方される医薬品。薬局やドラッグストア、テレビコマーシャルでしょっちゅう見るし、意識して飲んでいないが、体にいいイメージ。その漢方薬の原料になる薬草の栽培に乗り出すという。
 栽培する薬草のうち有力なのは甘草(かんぞう)。漢方薬の全種類中8割以上に配合されており、国内で販売されている漢方薬に欠かせない生薬だ。湿度の高い日本では自生しないといわれ、年間輸入量のほとんどを中国に頼っているが、中国は生物資源の乱獲を防ぐとして2000年ごろから甘草の採取や輸出を規制しており、輸入価格がここ5年間で4倍近くに上昇。一方で漢方薬の国内需要は伸びており、原料となる甘草の安定確保やビジネスチャンスとしてすでに大手メーカーやベンチャー企業が栽培に乗り出している。
 耕作放棄地は病虫害や鳥獣被害の発生、拡大といった営農面での悪影響、廃棄物の不法投棄、景観の悪化といった地域住民の生活環境面で大きな課題になっている。由良町ではNPO法人か民間団体を軸にして試験栽培を始める考え。高齢化や後継者不足で増える耕作放棄地や鳥獣害対策に加えてお年寄りの生きがい対策、産業振興の一石四鳥、それ以上が期待できると盛り上がっており、たとえ「一鳥」でもいいし、挑戦に意味はある。今後の進展に注目したい。 (笑)