「またすったわ」。60歳代の主婦が嘆く。自動車を縁石でこすったのだという。とある町。県道の拡幅工事に伴い、連結する1本の道路が通行止め。車両対向はできないものの、大きな乗用車やちょっとした作業車でも十分通行できる広さの道路で、周辺住民にとっては貴重な生活道となっている。通行止めになってから、住民は迂回を余儀なくされ、袋小路までならずとも、残された道は軽車両が通るのもやっとだったり、曲がり角が鋭角だったりと四苦八苦。ハンドル操作に自信がない住民は車をこすることは多々。40歳代の主婦はファミリーカーを駐車場に止めたままで利用を断念したよう。住民は不便を強いられ、毎日の悩みの種。
 県道拡幅計画は少なくても10年ほど前からあったという。話を聞いたとき、随分前から分かっていることなのになぜ対策をしてこなかったのかと不思議に思った。地形上難しいにしても、周辺の田畑の地主や家主にお願いして道路を拡幅したり、曲がりやすく角切りするなどして何としてでも迂回路を確保しなければならなかったはずで、住民生活への支障はなるべくしてなったようだ。
 前述の60歳代の主婦は、迂回路沿いにある家の庭から道路に張り出した枝木の伐採を地元自治体に要望。自治体からすぐに家主に頼み解決したが、本来なら工事の前にお願いすべきこと。また30歳代の女性は迂回路の確保を申し入れたところ、「県道拡幅に伴うことなので県へ言って下さい」とたらい回しにあったという。迂回路を確保できなかったことしかり、対応しかり、首をかしげる。2週間の予定だった工期はさらに2週間の延長、通行止めは約1カ月間に。きょうもまた車にキズが一つ。行政への不満が募る。 (昌)