先月29日、高さ634㍍の地上デジタル放送用タワー「東京スカイツリー」が竣工した。昭和33年に完成した東京タワーの約2倍という驚くほどの高さ。無知な筆者は「台風などの強風は大丈夫なのか。想定外の出来事で倒壊し、大惨事にならないのか」などと心配してしまうほどだ▼スカイツリー竣工の数日前には大手ゼネコンの大林組が宇宙エレベーター事業を発表した。全長は月と地球の距離の4分の1に相当する9万6000㌔㍍で、高度3万6000㌔㍍にはターミナル駅を建設するという。もちろんスカイツリーとは比較にならない規模だが、強度のある炭素繊維のケーブルで地上と宇宙を結ぶことで建設が可能になるという▼科学の進歩の上にいまの生活があるのだが、それは場合によっては大きな犠牲を伴うこともある。アメリカが開発したスペースシャトルを例に挙げると、爆発事故を起こして7人の宇宙飛行士が死亡したこともあった。車でも飛行機でも、これまでには事故で多くの人命が失われた▼「科学の進歩には犠牲がつきもの」といわれることがある。大きな犠牲が発生する可能性があることに対しては、もちろん別の方法も検討しなければならない。物事の目的を達成するためには何通りもの方法があり、その中からよりリスクが少ない方法を選ぶべきだ▼原子力発電も科学の進歩で実現した。しかし、昨年3月には東日本大震災に伴う福島原発の事故が発生した。あれからもうすぐ1年。事故の発生を科学技術の失敗や経験として位置づけ、技術の改善を選ぶべきなのか、それとも原子力発電に替わるエネルギーを他に転換するべきなのか。真剣に考えなければならない時である。  (雄)