「がんばろら日高川町」の最終回は、玉置俊久町長に復旧、復興、防災対策の今後についてインタビューした。
--復興へ歩み出した被災者の皆さんからあらためて話を聞かせていただくと、やはり一番多かったのは防災に対する声。この問題をどのように考えていますか。
 今回の水害で防災にはインフラ、情報伝達、住民の意識の3つすべてが合致しないといけないということをあらためて感じています。インフラでは多くの水を放流した県営椿山ダム、日高川の河川のあり方について一歩踏み込んだ対策を打ちます。住民の立場にプラスして専門的、科学的な見解がなければ、ダムの運用規定見直しは難しいと考えています。いまのところまだ具体名まで明かすことはできませんが、河川土木・環境の大学の権威、教授の方々に日高川の研究について支援をいただけることになっています。関係機関との研究を踏まえたうえでダムの運用規定については、事前放流とともに、洪水調節開始の流入量を毎秒600㌧から1000㌧に変更するなど下流域への放流量を穏やかにする取り組みを県に提言できると考えています。河川は川幅を広げる、川の流れを速やかにする、堤防を高くするなど地域に見合った改善策を求めていきます。
 情報伝達については防災無線をはじめ、個別受信機、防災となり組の避難誘導活動などで住民周知に努めていますが、サイレンの種類を増やそうかと考えています。現在火事用に民家火災と山火事の2パターンしかないのですが、水害用、地震用などケースに応じたサイレンもつくりたいと思います。高齢者の方々には、かなり早いと思われる段階でも、 明るいうちに、 高台にある集会所などに避難していただくようにしたい。 今回の水害でいくつかの避難所が浸水被害を受けたので、すでに避難所の変更、 水害用の避難所設置に取り組んでいます。それにほとんどの地域が断水となったように水の確保が重要で、 ハザードマップに利用可能な井戸の位置も掲載していきます。
 住民への意識についてはとなり組の活動をはじめとするさまざまな取り組み、周知などでより一層の高揚を呼びかけていきます。
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防災対策等の質問に答える玉置町長(23日、役場町長室で)
--農家の方々からは各種支援策に感謝の声が多く聞かれる一方で、より柔軟な対応を求める意見がありました。今後、町としてどのような対応を考えていますか。
 今回、これまでにない支援をしています。ただ、支援の財源も皆さんの税金であり、何もかも使えるわけではありません。とにかく不安なことや要望があれば、役場に連絡いただきたい。被災者の方とよく相談したうえで、解決策を見いだしていければと思います。
 解体処理施設や飼育小屋の水没で町を代表する特産、ホロホロ鳥も大きな被害を受けました。特産の復活へ新たな振興策などあれば教えてください。
 施設に関して言えば、生産の場と住民生活の場を分けなければいけないので原状復旧が基本で、元の場所へ再建することになりました。それに新たな土地を探すとなると復旧に時間を要してしまいます。復活へシシ、シカと合わせて猪鹿鳥のジビエ食材として、PRに一層力を入れていきます。中長期的な振興策として生産者を大々的に募集しようかとも考えています。ホロホロ鳥生産の研修生制度みたいなものを構築していきたい。
--観光が盛んな町ですが、客足への影響など不安はないですか。
 川に行かなくても山もあるし、田畑もある。ゆめ倶楽部21が展開する体験や農家民泊などで自然や農村をいっぱい楽しんでいただける。古典芸能のメッカ、道成寺もある。十分やっていけます。どんどんPRもしていきます。
--来年はどんな一年にしたいですか。
 各種支援事業を継続していくとともにインフラの本格復旧に取り組まねばなりません。単なる復旧にとどまらず、「改良復旧」につなげていくことが重要。それに加えて従来のまちづくりのための事業、具体的には有害鳥獣対策とジビエ推進、農業振興、企業誘致、自然エネルギー産業化支援、高速道路4車線化へ向けての活動などいろんな事業も災害復旧で滞ることのないよう実施していきます。新たな施策にも積極的に取り組んでいきたい。日本一元気な町へ頑張っていきます。
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被災現場を視察する玉置町長(9月7日、松瀬地内)
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 この連載は小森昌宏、片山善男、柏木智次、吉本英樹、湯川賀弘が担当しました。