今月13日付から本紙1面に連載している「がんばろら日高川町」の取材、編集を担当させてもらっている。台風12号の大水害から3カ月がたったいま、復興へ歩み出した人たちの姿を追いながら被害の大きさをあらためて伝え、まだ復旧半ばの現状、今後の課題にも迫りたいと思っての企画だ。普段はスポーツと日高町を担当しており、これまで被災現場は車で通ることはあっても実際に地域の人たちに詳しく話を聞く機会はなかった。自身の取材や他の記者の記事を通じてみえてきたのは、まだまだ復旧への道のりは遠いということ。目に見える部分は日々、元通りになっていっているが、一歩地域に踏み入れば支援を必要とする人たちがたくさんいる。
 特に農業は深刻な問題。無事だった畑の管理を続けながら、被害にあったところの復旧に取り組まなければならない。「まだ片付けは1割程度」というミカン農家は、今後の復旧計画は立っても行政の補助期限に間に合うかどうかの切実な思いを持つ。巨費を投じて建設した自慢の鉄骨ハウスが濁流で全壊した農家らからは防災対策見直しを望む声もあり、早急に対応していかなければならない課題が山積していると思い知らされた。
 記者は文字通り「文章を記す人」だが、それが一番の仕事ではない。この連載を担当し、再認識させられている。議会や会議、記者会見を追いかけるよりも現場に行き、取材することが始まり。現場に行けば見えなかったものが見え、それまで聞こえてこなかった声も聞ける。まず「記者」より現場で声を聞く「聞者」でなければならない。大災害を含め、いろんなことがあったこの1年。自分は「聞者」であったかどうか。よく反省して来年へつなげたい。  (賀)