「そんな気分になれない」、「仕方ない」、「落ち着くまで考えられない」。氏子らからこんな声が聞かれた。台風12号の影響で甚大な被害を受けた日高川町の4つの神社の秋祭りで余興等は自粛し、神事のみ執り行うことが決まった。10月9日本祭り予定だった小釜本の長子八幡、同日の三百瀬の紀道、14日の皆瀬の下阿田木、16日の土生の土生八幡。
 ことしのような余興などの中止は昭和天皇が崩御されたとき以来だという。4つの神社の氏子の地域は家屋・道路など倒壊、収穫を前にした田畑が水没するなど被害は大きく、一部地域では水道もまだ復旧していない状況。何よりも尊い氏子の命まで奪われている。関係者の協議の場ではいずれの秋祭りとも「例年通りの実施」を望む声は上がらなかったという。「祭りで元気づけることもできるのでは」との意見もあるかも知れないが、筆者的にも、神事のみという結論だったと考える。
 これら日高川町の秋祭りは地域色が豊かで見どころも盛りだくさんだ。挙げれば切りはないが、長子八幡は何といっても鬼の追い出しで、頭屋の鬼と他組の若中の激突は迫力満点。紀道はみなべを除いて日高地方ではここだけとなった駆け馬、土生八幡は鳴り物なしの静寂の舞を披露する双頭の獅子で、毎年見物人を魅了。各組の屋台や四ツ太鼓等に、若中の勇ましい姿も多くの注目を集める。奉納相撲が有名な下阿田木は、相撲を見ながら若衆らが酒を酌み交わすのどかな感じがたまらない。いずれの神社とも神事で復興を祈願することになっている。ことしは亡くなられた氏子を偲びながら、みんなが一丸となって一日も早い復旧と元通りの暮らしができるよう全力。来年はきっと楽しい秋祭りが迎えられるはず。
       (昌)