リビア情勢は反政府軍の攻勢で首都が陥落した。カダフィ大佐が風呂に入って豪華なソファでホラー映画を見ていた「空飛ぶ五つ星ホテル」の専用機が接収され、室内プールや純金の人魚の椅子など、漫画に出てくるような豪邸の内部も暴かれた。賞金首の最高指導者はどこへ逃げたか、とりあえず、42年に及ぶ独裁政治が終焉を迎えた。
 国内では、党内外から「辞めろ辞めろ」の大合唱だった菅首相がようやく退陣。「やるべきことはやった」というフリのきいたボケをかまし、かわって野田佳彦党代表が新しい首相に選出された。党執行部人事は党内融和をアピールする姿勢があるというが、国民にすれば国会議員だけが投票する権力争いに関心は低く、野田首相への期待も大きくはないのではないか。
 憎まれっ子ほど世にはばかる。政党にしろ、自治体にしろ、国家にしろ、権力を握るトップが無能で無責任な組織は部下の能力が発揮されない。会社もしかり。伸びる会社は上に立つ人間ほど頭を垂れ、部下のだれよりも仕事をしてこそ、部下も会社のために力を尽くすのだが、実際、これがなかなかうまくいかない。
 66年前の日本は占領軍に抵抗する気力すらないほど国民は疲れ、厭戦ムードが満ちていた。アメリカによる戦後統治も大きな混乱はなかった。しかし、今回のリビアは戦いが短期に終わり、国民もさほど疲れてはいない。となれば、イラクと同様、あり余る力と不満がテロという形で噴出しかねない。
 野田首相は戦後最大の国難にあたり、かつての昭和天皇のように、まずは疲れ果てた国民に目を向け、ともに立ち上がろうという強い意志をみせねば、信頼は取り戻せない。     (静)