東日本大震災で被災した岩手県釜石市では、児童生徒ほぼ全員が無事だった「釜石の奇跡」と呼ばれる避難行動がある。同市では平成17年から大学教授らと防災教育に取り組んでいたが、18年の地震の際には避難率が1割にも満たなかったため、子どもたちに登下校時の避難計画を立てさせたり、津波の恐ろしさを学ぶための授業を増やすなどした。その結果、先の大津波では学校にいた児童生徒だけでなく、下校していた子どもたちも避難した。「地震即避難」の教えを徹底した成果といえる。もう一つ、釜石では子どもたちが避難する姿を見て住民も避難を始めたという調査結果が出ている。
 ある大手新聞の連載に、東日本大震災の教訓を生かすため、三重県尾鷲市の取り組みが紹介されていた。釜石市の取り組みを学ぶものだ。尾鷲市もこれまで津波に襲われてきた地域で、学校の授業の中で防災教育をどのように進めていくかの手引書の作成作業に入るという。このように迅速に取り組むまちは、近い将来巨大地震が発生しても、成果を出すに違いない。
 先の大震災で和歌山県にも大津波警報が発令された。数年前から津波に対する対策にまちぐるみで取り組んでいる田辺市などの海岸部では、多くの住民が高台に避難したという。一方、日高地方では避難した人はほとんどいなかった。これが日ごろからの意識の違いである。この意識を変えるには、率先して避難する「避難リーダー」が必要。釜石のように、子どもたちが逃げるお手本を見せれば効果は大きい。日高地方でも町や学校単位で「子ども避難リーダー」の育成に取り組んではどうか。「子どもたちが頼り」というのも情けないが。 (片)