アニメ映画界の巨匠宮崎駿さんが企画・脚本を手がけたスタジオジブリ作品「借りぐらしのアリエッティ」がDⅤDでレンタルを始めたので、早速借りた。物語は人間の家の床下で「小人」が、食料や日用品を迷惑にならない範囲で少しずつ「借り」ながら生活していく設定。その借りた食料などをいつ返すのか本編では紹介されないため、小人たちがしていることはただのこそ泥のように思えるが、そんなヤボなことをいってはこの物語の本質から外れる。
 ストーリーは主人公の小人の女の子「アリエッティ」が人間の少年「翔」に自分の姿を見られてしまうところから始まる。小人が人間に見つかることは厳禁だが、心臓病を抱えながらも心優しい翔とやがて心を通わせていき、世の中には安全で安心できる人間もいることを知る。途中まで観た段階では「結局のところ人間と小人とが種族を超えて仲良く生活することになるのかな」なんてハッピーエンドを予想していたが、ラストは全くそうでもなかった。何かもどかしさが残る感じだが、最初から最後まで静かで心温まる雰囲気で展開される物語に独特の「癒やし」を感じる。これはジブリ作品の特徴ともいえる。
 毎回、ジブリ作品にはさまざまな社会的なテーマが隠されているが、今回は「生きることへの勇気」ではないだろうか。果たして心臓病の翔は生きることに絶望を感じながらも、手術を受けてその運命はどうなるのか。本編で特に紹介されているわけではないが、どこかにその答えのヒントが隠されている。それを知ったとき、さらに物語に深い味わいを感じた。      (吉)