有数のアユ、アマゴの産地で知られる日高川。シーズン中は全国各地からの多くの太公望でにぎわう。それなのに筆者はかねて不思議に思うことがある。河川は「友釣りと言えば日高川」というほど釣りでは有名で、流域では民宿や旅館などでアユ料理も振る舞われているのだが、なぜかアユどころとしてのインパクトが弱いように感じてしまう。
 その疑問は、日高川町松瀬、日高川漁業協同組合へアユとアマゴの加工品開発の取材で合点がいった。漁協によると日高川には漁獲物の特産品がほとんどなく、食品や商品などとして流通が行われていない状況。漁協の種苗センターで養殖している生産魚についても放流用種苗としての出荷が主で、川の恵みを生かしきれておらず、産地としての魅力低迷につながっているというのだ。これが筆者も感じるアユどころとしてのインパクトに欠ける原因になっているようだ。そんな中、漁協は昨秋から前述の加工品を販売。それはアユとアマゴの一夜干しで、材料は、センターで養殖した高品質な生産魚であるだけに味は絶品。筆者も口にしたが、お勧めの一品だ。
 漁協をはじめとする関係団体で組織する協議会の計画が国の補助事業に採択される見通しで、漁協内に水産物加工処理施設が整備される。加工品を生産する施設で、一夜干しの増産、新たな加工品も開発、販売するという。一方、友釣りの方は県条例改正を受け、ことしは解禁日が5月3日に前倒しされた。来年は全国一早い幕開けとなる可能性もあり、ますます人気を呼びそう。加工品の特産化により釣りとの両輪でアユどころを全国にアピール。筆者も加工品の特産化に期待を寄せている。    (昌)