季節外れの台風が日本各地にツメ痕を残し、日高地方にもとくに農作物や農業用施設に被害を出した。あくまで予報だが、接近前は梅雨前線の影響もあって雨台風といわれていたが、実際は雨よりも風による被害がほとんどだった。これだけ科学が発達しても、自然相手では予想通りにはいかない。目の前に迫っている台風ですら来てみなければ分からないのだから、地震の予知、被害予想など至難の業といえるのかもしれない。
 しかも今回は、温帯低気圧に変わってからの方が被害が大きかった。警報が解除されてからの方が風が強かったのだ。そんなこともあるのが当たり前なのだが、温帯低気圧になったというだけで、まるで荒れ狂っていた海が急に凪ぐかのように、まったく無害のものに変化したように錯覚してしまう。台風ではなくなっても、低気圧には変わりないはずなのに。勝手な先入観が油断を生んでしまう。取材の中で話を聞いた農家の人も、ハウスのビニールを外そうか迷ったが、温帯低気圧に変わったから大丈夫だと思ったといっていた。温帯低気圧に変わるということは勢力が衰えていることに間違いはないが、局地的に突風や豪雨に見舞われる可能性があることも頭に入れておかなければならない。
 南海地震も、今後30年以内の発生確率が60%といわれると、30年を一つの基準にしてしまう傾向がある。あと30年はこないだろう、地震まであと30年はあるなどと勝手に自分の頭に刷り込んでいないだろうか。あくまで確率を示すための数字ということを忘れてはならない。思い込みや勝手なイメージは大敵、という意識改革がまずは必要だろう。 (片)