先日、東日本大震災で被災し、日高地方へ引っ越してきている高田有、新子さん夫妻の講話を取材した。震災当日、テレビで放送されていたような津波が押し寄せてくる様子を目の前で体験しており、「津波はまるで真っ黒な溶岩で家や車をすべて飲み込み、盛り上がりながら向かってくる。死ぬときはこういう感じなんだろう、というほどの恐怖感を味わった」と生々しく語った。
 各地に大きな被害をもたらした津波だが、意外にも到来するまでは高田さんも周辺にいた人も楽観的だったという。というのも震災の少し前にも震度5の地震があり津波が到達したのだが、予想より低く気仙沼市でわずか1㍍程度。震災後6㍍以上の津波が放送されていたが、「せいぜい2㍍程度だろう」と甘く見てしまう結果になったという。さらに津波が到来するまで時間が遅かったこともあり、山に避難した人のうち、何人かは下山し津波に飲み込まれたという。
 震災当日、和歌山県内でも大津波警報が発令された。津波警報の出し方にも問題があると思うが、実際のところ危機感をもっていた人は少ないのではないだろうか。今回の地震で、津波や被災地の様子をテレビで目の当たりにし意識を新たにした人は多いだろうが、被災者の話はより具体的な恐ろしさとともに、後悔、教訓などが伝わってくる。
 日ごろの訓練はもちろん重要だが、まずは地震・津波への危機意識を高めることが大切。今後、各団体などの講演会で積極的に被災者を招くとともに、多くの人に参加してもらい、生の声を聞いて本当の地震の恐ろしさを知ってほしい。  (城)