天皇皇后両陛下をお迎えする全国植樹祭まであと4日。大震災の混乱のなか、両陛下は7週連続で避難所を訪問され、被災者に「お体の調子はどうですか」、避難所のスタッフには「くれぐれも力を合わせて」と声をかけられた。少しでも被災者の心の支えになりたい、国民と困難を分かち合いたいという思い。計画停電の際は、皇居も自主節電を続けられ、ろうそくの明かりで食事をとられたこともあったという。
 植樹祭は「緑の神話 今 そして未来へ」がテーマ。式典では天皇陛下がウバメガシなど、皇后陛下がヤマザクラなどをお手植えされる。日本にとって戦後最大ともいわれる苦難の中の開催、緑豊かな国土への国民的理解はもちろん、「紀州木の国」から東日本、日本の復興への息吹をもたらすことができるよう、県民が1つになってイベントを成功させたい。
 妻や子が行方不明となったまま、仲間と笑い合う日常も空間も消えた人たちがいる。その痛みを願っても分け合えないのが災害の理不尽な現実。被災者に向けた「頑張ろう」「みんな一緒」というエールはどこまで届いているのか。どんなに言葉を尽くしても尽くしたりないのなら、いっそ黙っていた方がやさしさなのでは。そんなことを思ってしまう自分は冷たい人間なのか。いろんな思いが交錯する。
 有性生殖の人間は多様な遺伝子を持つことで環境変化に対する強さを生むが、クラゲなど「みんな同じ」遺伝子の無性生物は環境の変化に弱く、一気に全滅というリスクも伴う。大震災をともに乗り越えるため、両陛下のお言葉を太陽の光として、小さくも力強く芽生え始めている被災者1人ひとりの多様な希望に目を向けたい。 (静)