この仕事をしていると、自然に「逆の立場」や「相手の気持ち」を考えるようになる。公平、公正な記事を書くうえで重要になるからだ。例えば、町が「園児の数も減ってきており、施設を維持するのは厳しい財政状況の中では苦しい」と保育所の統合を発表したとする。町の発表だけを報道するのならば町の広報紙でも十分で、新聞社の仕事はそれだけで終わってはならない。実際に統合されれば通園などで困る保護者たちの声も取材し、何か問題があるならば多くの人に伝え、本当に計画通りでいいのか検証する機会を提供することも大切。統合される側の意見も記事にしてこそ、新聞社の存在価値が高まると思う。
 日常の些細なことでも相手の気持ちは大切。自分が使ったときにコピー用紙がなかったらどう思うか。次の使用者のことを考えれば、補充しておくのは当たり前のことだと気がつくはず。仕事でいえば、こんな内容で記事を書かれれば相手はどう思うか、記事を書いてほしいと依頼を受けた時、限られた紙面の中でどの部分を重視して伝えると喜んでもらえるか。まだまだ他人に胸を張れるほどではないが、新人記者には「逆の立場」「相手の気持ち」、これを常日頃から考えてもらいたいと言っている。
 東日本大震災から2カ月。被災地はまだがれきの山、たくさんの避難住民がいて、喫緊の課題が山積している。これまでの復興や原発問題の取り組みを見ていると、政治家、特に国のトップにいる人たちには本当に被災者の気持ちが分かっているのかと疑いたくなる場面が多い。震災後よく流れるCMではないが、目に見えない「思い」より、被災者の立場に立った、目に見える「思いやり」を発揮してほしい。  (賀)