十数年前、記者になり立てのころ野生動物の研究家が由良町でカワウソの調査をするのを取材してえらい目にあったことを、ふと思い出した。
 取材場所は沖合にある小高い山のようになった島で、船で現地まで渡してもらうわけだが、筆者は集合時間に遅刻。調査隊は先にいってしまった。「何とかしなければ」とあせりながら、見ず知らずの漁師に頼み込んだらタダで船を出してくれるとのこと。深く感謝して現地に到着。しかし、島は木々がうっそうと生い茂り、調査隊の姿はどこへやら。「やばい、調査隊が先に船で帰って島に取り残されたらどうしよう」という不安と恐怖にかられながら急な坂道を登ったり、降りたり、切り立った崖をはうように移動したり、汗だくになりながら調査隊を探し回った。
 結局、調査隊を発見して無事帰れたが、話はまだ終わらない。実は調査隊と合流できたあとに何やら小動物の足跡も見つけた。普通なら写真を撮るとき、足跡の大きさが分かるようにタバコの箱を置くとか、人に指を差してもらうとか工夫するのだが、筆者は足跡だけのアップを撮って会社に帰り、ひどくしかられるというオチまでつく。全くいまから思えば何をやっていたのかと情けなく思うが、取材に遅刻しないという当たり前の教訓を身をもって得ることができた。
 さて、先日市の記者クラブに記事の投げ込みがあった。奈良県野生生物保護委員会(中尾敏夫代表)が県内でカワウソを探しているから、情報提供を求めているというのだ。「確かこの団体名はあの時の...」、いちまつの不安が頭をよぎりながらも、また現地取材の機会があればいってみたい...。   (吉)