ここ最近、暖かくなったと思えば寒くなったりと体調を崩しそうな日が続くが、先日取材に訪れた切目川の川岸にはたくさんのツクシが顔を出しており、春の訪れを感じさせる。春といえば出会いの季節であるとともに、別れの季節でもある。先日、日高地方の各高校で卒業式が行われ、筆者も紀央館高校を取材した。
 同校の小山宣樹校長は式辞で、幕末に江戸無血開城に貢献したことで知られる勝海舟の「自分の価値は自分で決めることさ」という言葉を取り上げ、社会に出てから自分で自分を評価する大切さや方法などを生徒に訴えた。日高高校の髙田晴美校長も「坂本龍馬のように広く深く強く、信念をもって生きてほしい」と、いずれも昨年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」で関心が高まっている幕末の英雄を取り上げ、生徒たちにエールを送った。
 幕末の志士らが成し遂げた歴史的偉業は言うまでもないが、そのときの彼らの若さには驚かされる。坂本龍馬は大政奉還時33歳、高杉晋作は奇兵隊創設時24歳、その他新撰組なども含め、幕末の有名人には20から30代が多い。いまより寿命が短く大人とみなされるのが早かったとはいえ、筆者と大して変わらない年ながら、「日本を変えよう」という思いを持ったことだけでも十分尊敬に値する。
 龍馬が19歳で江戸に出たように、20、30代で名を上げた幕末志士らは、10代のころからすでに志を持って行動に移している。不況下で就職難といわれ、いまの日本も厳しい状態が続いているが、ことし卒業する高校生たちには、幕末に生きた若者のような志をもって社会に出てほしいと思う。  (城)