20106-18-1.jpg 児童数の減少により、 三尾小学校が廃校となったのがおととしの春。 グラウンドから子どもたちの元気な声が聞こえなくなり、 地域ににぎわいを取り戻そうと、 Iターンで都会から移り住んできた人たちと地元の人たちが手を組み、 教室を活用した住民憩いのスペースづくりが始まった。 4月には学校の児童書や公民館の一般書をまとめた図書室、 談話室、 プレイルームなどがオープン。 毎週日・月曜の午後、 楽しい時間が流れる学校にお邪魔した。
 明るく魅力あるまちを自分たちでつくろうと、Iターンの移住者と地元の主婦らが中心となって、ことし1月に「コミュニティ三尾」というサークルが発足。旧三尾小1階の3つの普通教室を図書室、談話室、プレイルームとし、窓の外の桜が見ごろの4月3日にオープンした。図書室の本は学校にあった児童書、近くの三尾公民館にあった小説など一般書を移し、サークルのメンバーが自宅から持ち寄った本も合わせ数百冊。小説など一部は貸し出しも行っている。日曜大工が得意な男性の手で、本棚は地震に備えて腰より低い位置に作られ、ペンキで色を塗り、転倒防止器具を設置するなど安全面にも配慮。ゆっくりと落ち着いて本を読める、手づくり感いっぱいの空間となっている。
 談話室ではコーヒーサービスがあり、山から拾ってきた山フジのツルのオブジェ、11年前に豊中市から引っ越してきた服部千恵子さんの夫が描いた絵画なども展示。テーブルの上の花の器は花瓶ではなく、理科室にあったビーカーやフラスコを利用するなど、「できるだけお金を使わず、 遊び心で楽しみながら」の工夫がみられる。今月からは畳敷きの集会所(風速荘)に集まっていた囲碁クラブも談話室に移り、メンバーからは「椅子に座ってできるから足も痛くない」と好評。さらに隣の教室のプレイルームには卓球台があり、子どもも大人も和気あいあいと楽しんでいる。
2010-6-18-2.jpg コミュニティ三尾の主要なメンバーは現在10人で、8人までが美しい自然と景観、人の温かさにひかれて県外から移り住んできた人たち。Iターン移住者は定年を機に都会の喧騒から逃れ、自然に囲まれた田舎で静かな余生を過ごしたいという人と、新たな地で新たな人との出会いを求める人に分かれるが、 コミュニティ三尾のメンバーはほとんどが後者。リーダー的存在の服部さんは、「都会に比べて不便ではありますが、その不便さと自然の中で何か新しいことをしてみたいと思い、3年ほどの行ったり来たりを経て夫と2人で移住を決めました」。三尾に定住後は畑を耕し、花をつくり、人と積極的にかかわることで都会とは違うライフスタイルを確立。「いい友達に恵まれ、毎日自然に癒され、おいしい魚をいただき、いまは本当に幸せ」とにっこり。たまに豊中の家族や知人を訪ねるが、いつも「早く三尾に帰りたいと思い、帰ってきて煙樹ケ浜が見えてくるとホッとします。ここがついのすみかですね」という。
 服部さんのほか、海外生活経験もある代表の奥野敦子さん、愛媛県出身で北海道から引っ越してきた岡本炎弥子さんら数人のIターン仲間が趣味を通じて仲良くなり、奈良県から来た中村ミツ子さん、大阪から来た大倉久子さんら他のIターン組とのつながりが広がり、小西かをるさんや西悦子さんら地元の人たちも加わって交流の輪が少しずつ拡大。奥野代表は「とにかくしんどくならないよう、無理をせず、みんなで楽しもうというのが基本スタンス。今後は8月の区の恒例行事、 盆踊り大会で模擬店や子ども向けのゲームコーナーを計画しています。また、秋には朝市なんかもできればと、いろいろアイデアを出し合っています」。かつて、多くのカナダ移民を送り出した村はいま、県外からの移民を迎えて新たな盛り上がりをみせ始めている。