20102191.jpg インターネット人気を支える世界の1つにゲームがあります。大勢の人が同時接続でき、画面上で会話をしながら互いのキャラクターを動かすオンラインRPG(ロールプレイングゲーム)が韓国や日本の若者の間で大流行していて、あまりのおもしろさにハマりすぎて昼夜が逆転、不登校や出社拒否に発展する「ネトゲ廃人(ネットゲーム廃人)」も社会問題となっています。今回は大学時代、「モンスターハンター」というゲームで廃人になりかけたという男性を訪ねました。
 Mさんは京都にある大学を卒業し、 先月、 市内の会社に就職したばかりの23歳。 大学時代は学生マンションで1人暮らし、 高校生のころから好きだったオンラインゲームでよく遊んでいました。 数ある人気ソフトの中でもハマッたのは、 いま日本で最も同時接続数が多く、 「モンハン」 と呼ばれる「モンスターハンター・フロンティア・オンライン」。 昔、 ファミコンで大ヒットした 「ドラクエ (ドラゴンクエスト)」 のようなモンスターを退治するゲームですが、 人気の秘密はなんといっても世界中の人が同時に参加でき、 チームを組んで協力しながらモンスターを退治していく人間関係にあります。
 高精細で立体感あるゲームの世界、 なめらかで自然なキャラの動きは実写のようにリアルで、 モンスターや動物の鳴き声はソフト会社スタッフがアマゾンのジャングルで録音したものを使い、 ステレオサウンドのBGMはすべてオーケストラが演奏。 Mさんの6畳の部屋にはゲーム用のデスクトップパソコンがあり、 音声は正面の巨大なスピーカーから響きます。 モニターに登場するMさんのキャラは女性で、 歩いたり戦ったりするときはゲーム用コントローラーを使い、 他のキャラと話すときは 「チャット」 と呼ばれる機能を使って、 キーボードで会話文を入力。 ただコンピュータのシナリオに沿って目的を達成するのではなく、 参加者が自由に世界を歩きながら、 仲間とかかわり、 力と心を合わせて敵に立ち向かう協調、 共助の人間的なドラマが展開されます。
 月額1400円を払って登録すると、 キャラを作って一定のレベル以上のモンスター狩りに参加できます。 ほとんどの人は猟団 (りょうだん) と呼ばれるチームに所属しますが、 なかには一匹狼で猟団には属さず、 気まぐれに狩りに参加する人も。 また、 月に1回ぐらいのペースでソフト会社主催による狩りのスピードを競う大会が開かれ、 指定されるモンスターをいかに早く退治するかを競い、 上位3番に入るとゲーム内のキャラに栄光のトロフィーが贈られます。
 ランキングは公式ページで発表され、 これの上位常連になると参加者からリスペクトを集めるようになり、 「一緒に戦いたい」 とその人の猟団に入る人が増えるとか。 ちなみにMさんも、 過去には何万人も参加する大会で90番台に食い込み、 自らの猟団を旗揚げ、 20人近い仲間を集めたそうです。
 やり始めると時間を忘れてしまうだけに、 現実の学校や仕事の社会生活に支障をきたす人も少なくありません。 Mさんも一時は 「毎晩朝までやって学校で寝る」 という生活だったそうですが、やがてその学校へも行かなくなってしまう不登校が中高生の間で社会問題となっています。 現実にMさんの1つ下の友人は、 大学どころか1人暮らしのマンションから外出さえしないようになり、 食事はピザなどデリバリーで済ませ、 食事とトイレと寝る以外はひたすらモンスター狩りに没頭。 大学の友人らとは疎遠になる一方、 ゲームの世界では狩りの実力、 豊富なアイテムから日に日に人気者となりましたが、 現実には出席日数不足で留年が確実だそうです。
20102192.jpg このように、 現実の学校の先生や友人、 家族が何をいっても聞く耳を持たなくなり、 ゲーム内で築いたつながりだけが心のよりどころとなってしまう人は 「ネトゲ廃人」 と呼ばれています。 オンラインゲームの強い中毒性はある意味、 麻薬のようなもので、 実際に友人がネトゲ廃人となり、 自分も危なく廃人になりかけたMさんは、 「自分のキャラがゲーム内でどんなに有名なヒーローになったとしても、 それは現実社会ではなんの自慢にも評価にもなりません。 ゲームなんて所詮、 なんの生産性もなく、 時間とお金を無駄にするだけということを分かっていれば、 少なくとも廃人にはならないのでは」 と話してくれました。
 Mさんの友人とは逆に、周りの友人がこの 「モンハン」にハマッてしまい、孤立してしまった人もいます。市内の会社員の男性(29)は2年前、高校時代の友人3人と計4人でバンド活動を始めましたが、1人がモンハンにハマッて音信不通となり、練習ができなくなりました。仕方なく他の3人で集まっても、あとの2人も同じゲームの話ばかり。「おまえも一緒にやろう」 と誘われましたが、男性は断ったため、バンドは解散してしまったそうです。