作家の村上龍氏が今月17日に他界したとのニュースが報じられた。享年74歳。デビュー作「限りなく透明に近いブルー」で最年少(当時)の芥川賞受賞作家となってから、ちょうど半世紀である◆学生時代に文芸部だったが、先輩から1回生への課題として「限りなく…」を読むよう命じられた。米軍基地のある街で暮らす若者の日常を描いた物語で、正直あまり好きな作品にはならなかったのだが、「限りなく透明に近いブルーとは何の色か」と先輩に問われ「ガラスの破片でしょう」と答えた。主人公が最後にガラスの破片越しに空を眺める場面で出てきた言葉だったのでそう言ったのだが、先輩は「違う、あれは夜明けの空の色なんだ」と言った。その言葉のおかげで、不思議な爽快感が作品の印象として残った◆その後、1学年下の後輩が村上龍作品にハマり、彼女に借りて「コインロッカー・ベイビーズ」と「トパーズ」を読んだ。いずれも過酷な現代社会に翻弄されながら、それぞれの生を自分なりにひたむきに全うしていこうとする人間が描かれる。そして2、3年前、2010年代に描かれた「オールド・テロリスト」を読んだ。「コインロッカー・ベイビーズ」で描かれていた現代の社会システムをひっくり返そうという衝動が、ここでも作品に通底するテーマとなっている。作家のスケールをあらためて感じる作品だった◆3月にたまたま、氏の最後の出演となったテレビ東京系「カンブリア宮殿」を見た。「死&生 村上龍」とのメッセージが残されていた。画面に大きく書かれたその言葉を眺め、現代という特異な時代に向き合った作品達、そしてデビュー作で描かれた「夜明けの空の色」を思い出していた。(里)


