
本作は、ミステリ技法が物語全般に応用可能であり、読者を引き込む力を持つということを解説する創作指南書です。著者杉井光はミステリや推理小説は単なる特殊ジャンルではなく、伏線、叙述トリック、真相の隠蔽などの技法を通じて物語を面白くする普遍的な手法であると主張します。著者がデビュー当初から試行錯誤してきたミステリ技法の具体例を初公開しており、著書である短編『白薔薇の君』や『我が家の人食いガガジ』を通じて、伏線の張り方や回収、叙述トリックの使い方を実践的に学ぶことができます。
皆さま、「世界一透き通った物語」はお読みになられたでしょうか。確か本コーナーでも紹介されたことのある作品ですが、ネタバレ厳禁の凄まじいトリックが使われていて衝撃を受けたのを今でも覚えています。そんな作品を手掛けた作者がミステリ技法を解説した指南書があると知り、この本を手に取りました。「天空の城ラピュタ」や「注文の多い料理店」でもこういう技法が用いられている、なんて分かりやすく例を出してくれ、特に、杉井光の実際の著書を題材として、その話のどこにミステリ技法が用いられ、伏線がどう練り上げられたか、などが丁寧に解説されています。私自身、別に小説を書くわけでもなければ、ミステリに精通しているわけでもないのですが、そんな自分でも非常に理解しやすく、また楽しめました。
本作を読んで、小説家がいかにして物語を組み上げているのか、その一端を知ることができました。小説を書くことに興味のある方はもちろん、そうでない方でも十分に楽しめると思います。是非ご一読を。(之)


