
9月のテーマは「直木賞作家」。今回は、2024年に第170回直木賞を受賞した万城目学の短編集を紹介します。
「悟浄出立」(万城目学著、新潮文庫)
京都を舞台とした「鴨川ホルモー」、奈良を舞台とした「鹿男あおによし」などで知られる著者。本書は関西にかかわりなく、誰もが知る「西遊記」を題材としています。主要メンバーの中でも最も影のうすい、沙悟浄にスポットを当てているところがユニーク。
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俺は隣に追いついた悟空に、「しばらく、先頭を歩いてもいいかな?」と小声で申し出た。「ああ、もちろん」と悟空はなぜかニヤニヤ笑いながら了承した。俺はうなずいて、悟空の数歩先へ進んだ。だが、すぐさま振り返って訊ねた。
「すまない、どうやって進む道を決めているんだ?」
「馬鹿か、お前は」
悟空は呆れた声とともに、手綱を弾いて馬の動きを止めた。
「こっちが西天ですよ、と書かれた立て札がどこかに用意されているとでも思ったか? ただ、自分が行きたい方向に足を出しさえすればいいんだよ〓」


