日本神話には、コノハナサクヤヒメという美しい女神様が登場する。古事記、日本書紀によると、神々が住まう高天原から地上の葦原中国に天孫降臨した天照大神の孫、ニニギノミコトの奥様になった神様である。山の神であるオオヤマツミの娘で、九州の高千穂に降り立ったニニギと出会い、見初められ、妻となった。この時、姉で永遠を象徴するイワナガヒメも一緒に嫁いだが、ニニギがイワナガヒメだけを送り返したことで神に寿命ができたというエピソードもある。いずれにしても、コノハナサクヤヒメは九州の女神という認識である。
先日、静岡県富士宮市の富士山本宮浅間大社と富士山頂にある同大社奥宮に参拝した。御祭神がなんとコノハナサクヤヒメである。古事記、日本書紀に富士山の記述が一切ないのも大きな謎だが、九州の女神様、ニニギの妻がなぜ富士山の御祭神なのか、すごく不思議に思っていたので、現地で複数の関係者に尋ねてみた。浅間大社では古くから火山を鎮める浅間大神という神様が祀られていたが、江戸時代、古事記や日本書紀に出てくる有名な神様をという機運が高まり、浅間大神=コノハナサクヤヒメとしてお迎えするということになったとの話を聞いた。リアルで、面白い話だと納得した。
炎の中で子を産んだ逸話が残っているから、山の神オオヤマツミの娘だからなどという人もいて、そういうことも加味されているのだろうと感じた。現地に残る伝承も各地にあり、実際に行って、見て、聞いて、感じることで知れることがたくさんある。人によってとらえ方や考え方が違うし、何が正解かなんて誰にも分からない。だからこそ無限に話が広がるのも神話の魅力である。(片)

