10年ほど前から一度はやってみたいと思っていた富士登山に、8月下旬、挑戦してきた。スタート地点の五合目は穏やかな晴天で、絶好の登山日和。高山病にもならず順調に進んでいたが、七合目を過ぎたあたりから風が強くなり、八合目以降は一段と強く、濃い霧と相まって、真昼間にもかかわらずもうすぐ日没かと思うような天候。山頂は場所によっては台風並みの風で、安全のためお鉢廻りは断念。確かに天候には恵まれなかったが、天気の変わりやすい富士山でもそうそう体験できない環境の中で登りきれた達成感は半端なかった。どんなことでも挑戦してこそ得られるものがあると感じた。

 遠くから見る富士山は本当にきれいな形で、すさまじい存在感はまさに山の王様という雰囲気。古くから人々の信仰の対象となっていることにもうなずける。静岡県と山梨県にまたがっているが、八合目より上はほとんどが富士山本宮浅間大社の敷地となっており、どちらの県にも属さないという。いわば神域であり、畏怖の念を持って登らせてもらった。強風で山頂の火口の姿も見せてもらえなかったのは、もう一度登ってきなさいと、また呼んでくれているのだと解釈させてもらった。

 途中にある山小屋は登山客を天候や空腹から守り、働く方々の励ましの言葉や優しい笑顔は心を癒やし、力をくれた。登山道には迷う事のないようずっとロープが張られ、多くの個所には木製の板で階段を作ってくれている。ついつい自分の力で登ったと思ってしまうが、登山客を陰で支えてくれている人がたくさんいる。登りと下りですれ違う時も多くの人と声をかけ合った。日本のよさを感じられる場所でもあった。(片)