木村拓哉・長澤まさみ主演の映画でも人気の「マスカレード・ホテル」シリーズ最新作をご紹介します。

 あらすじ 一流ホテル「コルテシア東京」で、日本推理小説新人賞の選考会が開催。最終候補の一人にある死体遺棄事件の重要参考人の名があった。遺棄されたのは宮原亜子という女性の遺体で、出刃包丁とともに一部白骨化した状態で発見されたのだ。DNA鑑定で身元が判明し、肋骨に刃物の傷があったことなどから捜査本部が開設され、警視庁捜査一課の女性警部・梓真尋が捜査に当たる。

 捜査一課は出版社に働きかけ、潜入捜査の実績のあるコルテシア東京に会場変更を要請していたのだった。かつて捜査一課の刑事で現在はコルテシア東京保安課の課長として勤務するホテルマンの新田浩介は捜査への協力を求められるが、開示される情報は少なく、独自に元刑事の探偵・能勢に事件の詳細を調査するよう依頼する。

 一方、優秀なフロントクラークの山岸直美は「新田」を名乗る老齢の宿泊客のチェックインを受け付ける。それはシアトル在住の浩介の父、弁護士の新田克久だった。しかし、浩介は父とは関わりたくない様子。

 新田と尚美が出会う「マスカレード・ホテル」、前日譚の「マスカレード・イブ」、仮面舞踏会という、マスカレード本来の意味を前面に出して楽しませる「マスカレード・ナイト」、連続殺人などミステリーとしての要素を強くした「マスカレード・ゲーム」。こうして改めてシリーズ全作品を振り返ってみると、さすが当代随一のエンターテインメント系ミステリ作家とうならされます。

 そして本作は新田の過去にも踏み込み、父親との確執がクローズアップされる辺り、加賀恭一郎シリーズを思い出しました(そういえばガリレオ最新作も湯川学の家族が登場していました)。

 本作の中心を為す事件もまた、家族間で起こってしまう事件。家族は著者にとって、大きなテーマの一つでもあるように思います。

 そしてまた、本作では出版社「灸英社」が前面に出てくるあたり、初期からのファンはニヤリとさせられるんじゃないでしょうか。「撃鉄のポエム」が日本推理小説新人賞にノミネートされているのもご愛敬。短編集「黒笑小説」「歪笑小説」と合わせて読んでみて、ベテラン作家の嵯峨野武成に再会するのも面白いかもしれません。(里)