
本書は作詞家松本隆のヒット曲の裏側を明らかにしている。例を挙げると松田聖子「赤いスイートピー」、太田裕美「木綿のハンカチーフ」、寺尾聡「ルビーの指環」、KinKi Kids「硝子の少年」等である。
その言葉の原点にあるのは古代の雨乞いだという。穀物が豊穣に実るようにという願いが歌になり、それに繋がるのが万葉集だ。額田王の返歌にヒントを得て『木綿のハンカチーフ』ができた。
言語化するということについては次のように述べている。
紙の上に「悲しい」と書くと意味を限定してしまう。それは「悲しい」という言葉の他の部分を切り捨ててしまうからだ。ぼくが詞を作るときにはだんだんよくなるといってあげたい。『スニーカーぶるーす』で「ブルース」をひらがなにしたのは「ブルース」では悲しすぎる。『硝子の少年』も失恋の惨劇から立ち直る気持ちを書いた。
これまで日本には宝石を題名にした歌はなかった。歌謡曲は庶民に向けて作られているから、レコード会社からは贅沢品をタイトルにしたものは売れないと言われた。丁度バブルの頃で、ルビーはダイヤモンドよりもずっと安い宝石だし、ルビーの「ビ」と指環の「び」の韻もいい。周りの反対を押し切ってそのまま詞にして発売した。ぼくはここで男の弱さを書こうと思った。すると書かれていない男らしさが浮かび上がるから。
最後に松本は「ぼくにとって自分が幸せになるのはそれほど重要なことじゃあない。まわりの人たちみんなが幸せになるように生きたいと思っているんだ」。(秀)


