子ども時代の一番の愛読書は、小学館の「少年少女世界の文学全集」全30巻。「トム・ソーヤー」「赤毛のアン」などメジャーな長編小説が豊富に収められていたほか、各地の神話や民話がふんだんに紹介されていた点がなかなかユニークな構成。中でも特に気に入って愛読したのが「北欧神話」だった◆ギリシャ神話でいうとゼウスに当たる、白髪隻眼の主神オーディン。強い力を持つ雷神トール。美と愛の女神フレイア。そして世界に争いの種をまく、いたずらの神ロキ。どれもキャラが立っていて、ぜひアニメ化してほしいと思っていたが未だ実現してはいないようだ。北欧5カ国のうちノルウェーやスウェーデンに伝わってきた、北の荒々しい自然を思わせる雄々しい神話である。最後には「ラグナロック(神々の黄昏)」で激しい戦いのあと皆滅びてしまい、そのあと新たな人類が生まれるというダイナミックな物語だ◆先月開幕したFIFAワールドカップ北中米大会も大詰め。日本の関係する試合はどれも楽しみに観戦してきた。日本がブラジルに敗れてからはあまり観ていなかったが、ブラジルを破ったノルウェーチームとサポーターが一体化した歓喜の「バイキング・ロー」を見て、雄々しい北欧神話を思い出した◆数千人が一斉に腰を降ろす。ドラムを2度鳴らすと皆が「ロー(漕げ)!」と声を上げ、同時に両腕で力強く、船を漕ぐ動きを見せる。非常にシンプルな動きと掛け声で、だからこそ国を超えて多くの人を惹きつけるようだ◆スポーツという心躍らせる戦いの場で、プレーと勝負を楽しむ。同時に異なる文化、異なる歴史に触れる機会ともなる。多くの国を知れば知るほど、自分が豊かになるような気がする。(里)