廃線の危機に陥っていた紀州鉄道の存続に光が見えてきた。詳しい企業名は現時点で非公表だが、事業を譲渡する先が見つかり、今後本契約を結ぶ見通しだ。ただ、設立100年近くになる紀州鉄道は、昔から経営難で、風水害に伴う廃線の危機も乗り越えてきたが、近年は年間5000万円程度の赤字が続いている。運営主体が代わったからといって当然、この赤字が簡単に解消されるわけではない。

 企業側の経営努力はもちろん必要だが、これまでの歴史を見ると、それだけでなかなかどうにかなるものでもないのは明らか。そんな中、御坊市は紀州鉄道の公共交通としての価値、観光・地域資源の価値、そして持続可能な運行体制に向けた支援策を検討していく考え。公共交通の価値としては正直利用者が少ない現状を考えるとどうかと思うが、なければないで困る。一方、観光・地域資源の価値としては「日本一短いローカル私鉄」は唯一無二のものであり、これは御坊市にとって大きな観光資源だ。

 たま駅長でおなじみ和歌山電鐵の貴志川線では、県、和歌山市、紀の川市が2028年4月をめどに施設を保有・管理し、会社側が運行を担う公設民営の「完全上下分離方式」に移行することが決定。企業側の負担、損失を少なくし、運営改善につなげていく。

 紀州鉄道の存続には御坊市もまた、それ相応の財政負担を覚悟しなければなるまい。さらに県の協力も不可欠であり、いまファンクラブが頑張っているようにやはり市民で紀州鉄道を盛り上げていく取り組みも大切。クラウドファンディングのように不特定多数からの資金集めも有効かもしれず、支援の輪が全国に広がることを期待したい。(吉)