6月の旧名は水無月ですが、6月1~7日は水道週間、6月6日は「飲み水の日」。今月のテーマは「水」とします。

 「城のある町にて」(梶井基次郎著、新潮文庫「檸檬」所収)

 城とは三重県の松坂城(現在は松阪城とも表記)。大正時代に活躍し31歳で夭折した梶井基次郎が、姉夫婦の家に滞在した松坂町での日々を美しい文章で描く短編です。「桜の樹の下には」「Kの昇天」等耽美的な作で知られますが、本作品では家族との温かい交流がほのぼのと描かれます。

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 彼は或る日城の傍の崖の蔭に立派な井戸があるのを見つけた。(略)若い女の人が二人、洗濯物を大盥(だらい)で濯いでいた。(略)汲みあげられて来る水は大きい木製の鶴瓶桶に溢れ、樹々の緑が瑞みずしく映っている。(略)鶴瓶の方の女の人は水を空けた。盥の水が躍り出して水玉の虹がたつ。そこへも緑は影を映して、美しく洗われた花崗岩の疊石の上を、また女の人の素足の上を水は豊かに流れる。羨ましい、素晴らしく幸福そうな眺めだった。