静岡県で起きた一家殺害事件で殺人、放火などの罪に問われ、死刑判決確定から、再審無罪が確定するまでに44年近くもの時間がかかった袴田さん。このようなケースをなくすため、高市首相が総裁選の公約とした再審制度の見直しへ、刑事訴訟法改正案の国会審議が始まった。
現行の刑訴法には再審の証拠開示の明確な規定がなく、検察が弁護側に有利な証拠を開示しないという問題点が指摘されている。審理を長期化させる検察の不服申し立て(抗告)も大きな論点で、国会はこの抗告権を政府案通り「原則禁止」とすべきか、「全面禁止」とすべきかが焦点だ。
法律や条例はもとより、憲法でさえ時間の経過と情勢の変化によって問題が生じ、国民の生活や価値観にズレが生じることもある。時代にそぐわないとなれば、しかるべく議論のうえ、速やかに改正しなければならない。
再審制度のほかにも皇位継承をめぐる議論が大きくなりつつあり、緊迫する国際情勢、わが国の安全保障環境の悪化に伴って憲法改正を求める声が高まりつつある。伝統と平等、現実と平和主義の双方の意見が分かれている。
2月の衆院選では高市総裁率いる自民党が国民の圧倒的な支持を集めて大勝し、首相は来年春の党大会までに憲法改正発議のめどを立てたいとの考えを表明した。最大の狙いは9条の改正だが、戦後80年という時間が過ぎ、これまで重ねてきた解釈改憲に限界がきているのかもしれない。
変えるべきか、変えざるべきか。国民の声はSNSと結びつき、イデオロギーの対立はかつてなく激しい。政治家も国民も、100かゼロかの不毛な対立から抜け出し、決断するための議論を。(静)


